ワンセグがやってくる

地上波*1デジタル放送(通称、地デジ)のワンセグが2006年4月1日から始まります。詳細な説明は他に譲りますが、簡単に言うと地デジの一部を受信するものをワンセグと呼んでいます。画面の小さい携帯端末ではワンセグがその真価を問われることになります。試験放送は始まっていますので携帯電話のワンセグ端末などを手に入れればいまでも見ることができます。現在のところ地デジ独自のコンテンツはありませんので、アナログ放送と比較してもゴーストが出ないとか、移動しても映像が乱れにくい程度だと思うかもしれません。
電波利用効率の観点からみてアナログ放送はデジタル放送より効率が悪いので、昔からいつ終了させるかを議論していました。日本では地上波アナログ放送は2011年に停波することが決まっていますので、テレビやDVD/HDDレコーダなどの映像機器ををデジタル対応にする選択を迫られます。現在購入を考えている人は、もう少しいま持っているもので頑張って値段がこなれてからでもいいと思います。
地上波のアナログとデジタルを比較して、1つだけ大きな違いがあります。アナログは映像を一方的に受信するだけのメディアですが、デジタルは映像を受け取り同一画面に表示されるインターネットブラウザで詳細情報の取得や、生放送であれば意見を寄せることも投票をして番組に反映させることもできます。一方向だけではないメディアとなるのです。
実はそんな一方向だけではないメディアが日本にいままでもありました。BS衛星放送です。みなさんはBSのリモコンがボタンが多いとか複雑だと感じたことはないでしょうか?BSのリモコンであれば「青」「赤」「緑」「黄」の独立ボタンや「上」「下」「左」「右」「決定」ボタンなどがついているはずです。実はBSには意見を反映するための装置*2がついており、アナログ電話回線につなげば即時に意見反映が可能だったのです。いまどきアナログ電話回線もない家が増えていますし、そんな機能があったことすら知られていないでしょう。この失敗はコンテンツもほとんどなかったということより、電話とつなぐ複雑さと利点が理解されなかったためだといえます。
携帯端末のワンセグの場合はそんな失敗にはならないのではないかと考えています。それは携帯電話自体が通信機能を持っているからです。ワンセグを見ながらパケット通信によるインターネット閲覧は今の端末でも十分にできます。テレビ放送局は現在のところサイマル放送の義務*3を負っているのと、番組制作会社側の段階的移行という理由も考え合わせれば、本放送開始と同時にワンセグを生かしたコンテンツができること考えられませんが、アナログ放送の終了を待たずして補完情報などを追加することは想像できます。
ここでインターネットとの比較を考えてみましょう。テレビの人気深夜番組が5%ぐらいの視聴率がありますが、これをまじめに計算すると300万人の同一動画コンテンツ閲覧と同じインパクトがあります。先日おこなわれたWBCトリノ冬季5輪の視聴率はこの10倍ぐらいになります。万全を期してサーバダウンしなくても、24時間365日まったく不調にならないサーバは現在のところないと言えるでしょう。経済的側面から見て、そんな投資をするぐらいなら放送に投資したほうがはるかに安いというのもあります。双方向メディアとしてはインターネットのほうが先輩で一日の長があると考えられていますが、放送のような同時アクセスにとても弱いのです。これは緊急時・災害時における情報発信・収集元として失格であると考えてもいいと考えられます。放送局が緊急時・災害時の情報発信収集基地の役割を果たすことができるのなら、ワンセグを持っていてもいいかなと思えてきたのではないでしょうか?

*1:地上を這うように飛ぶ電波のことで、関東では現在のところ東京タワーが、そのうち墨田タワーがその機能を担うことになるのでしょう。単純に地上波と呼んだ場合は地上波アナログ放送のことです。

*2:アナログモデム

*3:アナログ放送とデジタル放送の2つは同一内容でなければならない